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日本文化を見直す     
-Japanese Culture as a Solution-



第2章

新しいパラダイムの誕生

思考は、しばしば言語に制約されるといいます。
文化が、人間の思考の賜物であるとするならば、
文化もまた、その固有の言語の賜物であるといえます。

第2章では、21世紀の指導原理と為りうる、東洋と、日本文化の価値を様々な視点から再認識していきます。



§1-1 「新しいパラダイム」
        見える価値から、見えない価値へ

20世紀は、産業革命に始まる、資本主義というテーゼと、それに対抗する、思想、共産主義との対立の世紀であったといえます。

2つの大きな思想の対立の世紀であったが故に、「戦争の世紀」でもありました。

しかしながら、大量破壊兵器が普及する今日、この対立を激化させ、長引かせることが、今後得策であるはずはありません。この対立を終わらせる第3の思想が、必要であるといえます。それが、本誌で主張するところの、東洋的、ある意味では日本的な考え方であると、筆者は考えています。

その理由は、21世紀は様々な意味で、「生命」の時代であるからです。

西洋文明の特徴は、眼に見えるものを処するに優れた文化でした。
それに対し、東洋文明は、どちらかと言えば、眼に見えないものを処するに優れた文化であるといえます。

例えば、「心」です。

「心」は、目には見えません。心臓のところにあるとか、能にあるとか、様々に言われますが、実際に手に取ることも、存在を物的に確認することもできません。あるといえば、「有る」し、ないといえば、無いものです。この極めて、存在の不確かなものに、東洋、とりわけ、日本文化は、基盤をおいているところがあります。

「日本文化」というけれども、しばしば、それは、「日本の心」と同義で、使われています。日本文化は有形よりもむしろ、無形の心に重きが置かれている場合がしばしばです。

日本文化の典型としてしばしば引き合いに出される、「茶道」「華道」「柔道」「剣道」でも、形や、することは変わっても、その根底に流れるものは、すべて、「心」を大切にすること。また、その「心」を磨くことに他ならなかったりします。それほど、古来、日本人は、この眼には見えない「心」を大切にしてきたのです。

「以心伝心」も同様です。もとは、心を以って、心を伝える意でしたが、しばしば、言葉すら、否定する表現として使われています。

「心を込める」ことが、日本では極めて大切なこととして受け取られています。しかしながら、この「心を込める」ということは、西洋的な観点から行けば、極めて不合理な非科学的な所作といわねばならないでしょう。
なぜなら、「心」は眼には見えないからです。そして、その存在も証明されてはいないからです。

この眼で見て確かめることのできない、「心」に象徴される「眼に見えない」様々な要素が、日本文化を構成しています。

 日本語には、多く「氣」という言葉が使われています。
「氣を遣う」「氣がいい」「氣が利く」「元気」「やる気」「氣にする」「氣に病む」」「氣が付く」「呑気」「気迫」「氣が抜ける」「気持ち」「気分」「気が散る」「氣に食わない」「氣を吐く」「氣が荒い」「氣が晴れる」など、日本語には多くの「氣が充ちて」います。

この「氣・気」は、辞書で引けば、『気体、香気、いき・呼吸、心の働き・意識、精神の傾向、盛んな精神、何事かをしようとする心の働き・考え・意志、あれこれと考える心・心配・注意、感情・気持ち・気分、興味・関心・人を慕う気持ち』と、様々な意味を持ちます。

しかも、これも「心」の働きを主に表現するためのものであることに気が付きます。つまり、日本語でも普段、私たちの日常何気なく使っている言葉の中にも、無意識に日本文化の代表とも言える、「気」や「心」を多用していることを考えるとき、今一度、日本文化を再認識してみることは、国際時代を生きる私たち日本人にとって、とても大切なことなのです。

なぜなら、この大きな転換期における、パラダイムの転換とは、すなわち、「見えるもの」に価値をおく時代から、文字通り眼に「見えない」ものに価値を置くこと。学問用語を使えば、animism(アニミズム・生気論)の復権を意味するからです。(ちなみに、animaは、ギリシャ語で、「呼吸するもの」を意味します。)すべてのものに生命が宿るとしたこの原始宗教の起源とも言われる世界に回帰せざるを得ないのです。

アニミズムの復権

ここで読むのをやめた方もいるかもしれませんが、今一度私たち日本人の特徴がいかにこのアニミズム的な考え方に間接、無意識に支配されているかを次回は、考えて見ることにしましょう。

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